ファイナンス用語基礎知識

この記事では、ファイナンス関連の用語について基本的な解説をします。

筆者の仕事の都合でファイナンス関連の情報をいろいろ調べていたのですが、意味がはっきりしなかったり、サイトによって説明が違ったりと、なかなかわかりにくい部分もあり、自分の理解のためという意味も含めて記事にしています。

それぞれの用語の厳密な意味を確認するというよりは、なんとなくのイメージを理解するのに活用いただければと思います。

デットファイナンス/エクイティファイナンス

「デット」(debt)と「エクイティ」(equity)は、貸借対照表(バランスシート、B/S)における区分の「負債」と「資本」をそれぞれ意味しています。

「デット」「エクイティ」の意味

  • デット:負債
  • エクイティ:資本

それぞれ区分に「ファイナンス」をつけた「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」は、それぞれ、負債を増やす形での資金調達、資本を増やす形での資金調達を意味しています。

「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」の意味

  • デットファイナンス:負債を増やす形での資金調達
  • エクイティファイナンス:資本を増やす形での資金調達

それぞれの代表的な例としては、以下のようなものがあります。

  • デットファイナンス:金融機関からの借入、社債発行
  • エクイティファイナンス:株式発行

金融機関からの借入であれば、バランスシート上負債科目の「短期借入金」「長期借入金」などの金額を増やすことになりますし、社債発行であれば「社債」などの金額を増やすことになります。
一方で、株式発行であれば、純資産(=資本)科目の「資本金」「資本剰余金」などの金額を増やすことになります。

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 返済義務の有無
  • 倒産時の弁済順序
  • 期待利益
  • 経営への関与

一点目の違いは、返済義務の有無です。デットファイナンスで調達した資金について、企業(=借り手)には返済義務があります。しかし、エクイティファイナンスで調達した資金については基本的に返済義務はありません。

株式投資をしている方の中には、株を購入したときに企業に対し資金を提供し、株を売却したときに返済を受けている、と認識されている方がいるかもしれません。
しかし、証券会社を通じて株式市場で売買を行っている場合、購入資金はもともと株式を持っていた人に対して支払われるものであり、売却時に受け取る代金は、株式を購入した人から受け取ったものになります。
よって、このような場合には、株式の購入時も売却時も企業(=借り手)との間に資金のやり取りはなく、企業は同じだけの資金を借りている(厳密に言うと、出資を受けている)状態になります。

二点目の違いは、倒産時の弁済順序です。

企業が倒産した際、その企業に残っている資産を処分し、残った金額を資金の貸し手に対して返済することになります。
このとき、債権者(=デットファイナンスの貸し手)は、出資者(=エクイティファイナンスの貸し手)と比べて、優先的に資金の返済(=弁済)を受けることになります。

このことは、債権者(=デットファイナンスの貸し手)が出資者(=エクイティファイナンスの貸し手)と比べて、背負っているリスクが相対的に低い、ということを意味します。

三点目の違いは、期待利益の違いです。

債権者(=デットファイナンスの貸し手)の期待できる利益には、利息収入と債権市場における売却益などが考えられます。そして、出資者(=エクイティファイナンスの出資者)が期待できる利益は、配当金と株式市場での売却益とが考えられます。

これらを比較すると、企業の経営がうまくいっている場合に、より大きな利益が期待できるのは、出資者になります。

債権者が期待できる利息収入は当初定められた利率を超えることはありませんし、売却益についても元本と利息の総額を合計した金額を超えることは考えられません。
しかし、企業の経営がうまくいった場合、株式の配当金は債権者の利息収入を上回る水準に上がる可能性が十分にありますし、また、株式市場での売却益に関しては、購入金額の何倍もの値段にまで上がる可能性もあります。

これらのことは、企業の経営がうまくいっている場合には、出資者の方が高い利益を期待できることを意味しています。

二点目と三点目を総合すると、債権者(=デットファイナンスの貸し手)はローリスク・ローリターン、出資者(=エクイティファイナンスの貸し手)はハイリスク・ハイリターンと言うこともできます。

四点目は、経営への関与です。

債権者(=デットファイナンスの貸し手)は基本的に経営に関与することはありません。
しかし、出資者(=エクイティファイナンスの貸し手)は株主総会などを通じて経営に関与することができます。

取締役の選任や重要な経営方針については、株主総会において承認を得る必要があります。
出資者はその場で賛成・反対の票を投じたり、あるいは、企業が提示したものとは別の案を提示するなどして、経営の重要な方針に対して影響を与えることができるのです。

直接金融/間接金融

次に「直接金融」「間接金融」について説明します。

「直接金融」「間接金融」というのは、資金を貸す側と借りる側の関係性を切り口にした金融の分類方法です。

  • 直接金融:資金を貸す側と資金を借りる側が直接的に結びついている形態
  • 間接金融:資金を貸す側と資金を借りる側が直接的に結びついていない形態

直接金融の例

直接金融の代表的な例としては、「株式投資」や「社債投資」などがあります。

株式投資であれば、資金の貸し手は株主として投資先の企業と直接関係することになりますし、社債投資であれば、債権者として貸出先の企業と直接的に関係することになります。

間接金融の例

間接金融の代表的な例は「銀行預金」です。

銀行預金における資金の出し手は預金者で、受け取り手は銀行から融資を受ける企業です。

このとき、預金者はあくまで銀行に対して預金をしているだけであり、融資を受けている企業との直接の関係はありません。

言い換えると、「銀行」という仲介者が間に入ることで、資金を出す側(=預金者)と資金を受け取る側(=融資を受ける企業)との直接的な結びつきがないということになります。

ターム・ローン/コミットメント・ライン

「ターム・ローン」「コミットメント・ライン」について説明します。
これらは、どちらもローンの形態を表す用語です。

ターム・ローン

ターム・ローンとは、融資額・金利・返済期間などの融資条件を記載した金銭消費貸借契約書を交わして行われる融資のことを指す用語です。
「証書貸付」(しょうしょかしつけ)や「証貸」(しょうがし)などと呼ばれることもあります。

いわゆる普通の住宅ローンや自動車ローンなどがこれに該当します。
住宅ローン・自動車ローンであれば、最初に購入資金が一括で融資され、その後毎月一定の金額ずつ返済(ボーナス返済があれば、半年に1回追加で一定金額の返済)がなされていくことになります。

このように、最初に一括で資金が貸し出され、その後、契約書で定められたスケジュールに従って返済が行われていく、というのが通常の流れです。

コミットメント・ライン

コミットメントラインとは、融資枠・期間をあらかじめ設定し、設定された融資枠・期間の範囲内で、借入人からの請求に応じて短期の貸し出しを行う方式です。

ターム・ローンと違い、最初にまとまった金額が貸し出されるのではなく、決められた範囲内で好きな時に借入ができる、といったイメージになります。

必要に応じて貸し出しがなされるため、決められた融資枠の全額が必ず貸し出されるわけではありません。
たとえば、100万円という融資枠をあらかじめ決めておいたとしても、借り手が50万円しか必要にならなければ、50万円しか融資が行われないということが起こり得ます。

また、貸し出しが複数回行われる可能性があるのもこの方式の特徴です。
たとえば、期間1年、融資枠100万円というコミットメント・ラインがあったとします。
3ヶ月目に貸し手が60万円の融資を請求しこれが実行された場合、融資枠には40万円の残りがあります。
なので、これを利用して、6ヶ月目に追加で40万円の融資を請求するということができるということです。

まとめると、あらかじめ合意した期間内に、融資枠(上記例でいうところの100万円)までなら融資するということを貸し手がコミット(=約束)する方式、と理解するとわかりやすいかもしれません。

バイラテラル・ローン

バイラテラル・ローンとは、相対で行われる融資のことです。
「相対」というのは、第三者を挟むことなく当事者同士で、というような意味合いです。
ローンにおいては、借り手と貸し手が直接契約するということと、1つの金融機関から1企業に対して融資が行われることを意味しています。

複数の金融機関がシンジケート団というグループを形成し、そこから1企業に対して融資する方式を「シンジケート・ローン」と言います。
「バイラテラル・ローン」は、この「シンジケート・ローン」との対比で、1つの金融機関のみが融資を行なっていることを示すために使用されることが多い用語です。

シンジケート・ローン

シンジケート・ローンとは、複数の金融機関がシンジケート団と呼ばれるグループを形成し、協調して融資を行う形態を指します。
前述の「バイラテラル・ローン」との対比で用いられる用語でもあり、貸出側の金融機関が複数いるという部分がポイントになります。

なお、シンジケート・ローンを省略して「シローン」などと呼ばれることもあります。

シンジケート・ローンの関係者

シンジケート・ローンにおける関係者には、大きく以下のような種類があります。

  • ボロワー:資金の借り手
  • アレンジャー/リードバンク:幹事行。シンジケート団の組成・取りまとめを担う。ボロワーから、アレンジメント・フィーを受け取る。
  • エージェント:シンジケート団とボロワーとの間の連絡取次や決済事務、担保管理などを担う。ボロワーから、エージェントフィーを受け取る。
  • パーティシパント:シンジケート団におけるアレンジャー/リードバンクを除く金融機関

 ※なお、シンジケート団に参加している金融機関のことを指して「レンダー」と呼びます。

シンジケート・ローンの組成の流れ

シンジケートローンの組成は、以下のような流れで行われます。

  1. ボロワーからアレンジャーへシンジケート団の組成を依頼する(これを「組成委託」「マンデート」などと言います)。
  2. ボロワーとアレンジャーとの間で、契約条件を合意する。
  3. アレンジャーがパーティシパント(参加金融機関)を募る。
  4. ボロワーとシンジケート団との間で、契約を締結する。

アンダーライト方式/ベストエフォート方式

アレンジャーがシンジケート団を組成する際の方式として、「アンダーライト方式」と「ベストエフォート方式」があります。

ふたつの違いは、十分な数のパーティシパントを募れなかった場合に、アレンジャーがどこまでの責任を負うかです。

  • アンダーライト方式:不足分の金額についてアレンジャーが融資義務を負う。
  • ベストエフォート方式:不足分の融資は行われない。

アンダーライト方式は、ボロワーの立場から見ると、予定していた金額の融資を確実に受けられるという点で有利になります。
一方で、アレンジャーの立場では、十分な参加金融機関を募れなかった場合のリスクを負うことになります。

このことから、アンダーライト方式においては、アレンジャーからボロワーに対してアンダーライト・フィーが請求されるのが一般的です。

ジェネラル・シンジケーション方式/クラブ・ディール方式

アレンジャーがパーティシパントを募る範囲として、「ジェネラル・シンジケーション方式」と「クラブ・ディール方式」があります。

「ジェネラル・シンジケーション方式」とは、既存の取引先かどうかを問わず、新規の取引先も含めて広くパーティシパントを募る方式です。

「クラブ・ディール方式」は、既存の取引のある金融機関のみを対象にパーティシパントを募る方式です。

シンジケート・ローンにおけるレンダーの関係性

シンジケート・ローンにおいて、貸し手には複数の金融機関がいます。

各レンダーからボロワーに対して融資が行われるのですが、原則、各レンダーとボロワーとの契約は個別に締結されます。
ですので、あるレンダーが義務を履行しなかったとしても、他のレンダーがその責を追うということは通常はありません。

一方、シンジケート団を組成していることによって、協調して行う必要があることもあります。
資金の貸出は各レンダーからボロワーに対して個別に行われますが、回収はアレンジャー/リードバンクが一括して行います。

また、契約条件の変更や期限の利益の喪失など、契約全体に係る重要な内容については、単独のレンダーで判断することは認めらず、シンジケート団として合意した上で行わなければいけません。

シンジケート・ローンのメリット

ボロワーの立場のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 単一の金融機関では担えない大規模な金額の融資を受けられる。
  • 複数の金融機関と同一の条件で取引できる。
  • 事務手続きがエージェントとの間に限定されるため、手間が軽減される。
  • 多数の金融機関から融資を受けることで、企業としての信頼性向上につながる。

レンダー側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 単一の金融機関だけではリスクを負いきれない案件でも対応することができる(リスク分散になる)。
  • アレンジャー、エージェントなどの役割を担うことで、フィー収入を得ることができる。

ストラクチャードファイナンス

ストラクチャード・ファインナンスとは、通常のファイナンス形式にはない複雑な仕組みを有するファイナンス形態を指す用語です。

日本語で「仕組み金融」とも言われ、プロジェクトファイナンスや証券化など、様々な手法が存在します。

典型的なスキームは、SPC(Special Purpose Company:特別目的会社)を設立してそこに資産や事業を移し、対象の資産や事業から生まれるキャッシュフローのみを返済原資とした融資を行う、というものです。

SPCで行われる特定の事業を返済原資としたものが「プロジェクトファイナンス」であり、SPCに移した特定の資産から生まれるキャッシュフローを返済原資とするものを「アセットファイナンス」と呼びます。不動産流動化や債権流動化などの手法は、この「アセットファイナンス」に該当します。

SPCに対して融資が行われる、という形を取ることにより、企業の持つ資産や信用力をもとにした従来の融資(コーポレート・ファイナンス)と比較して、融資を受ける側の責任範囲が限定されるという特徴があります。
従来のコーポレート・ファイナンスでは、債務の弁済が困難になった場合、企業が保有しているあらゆる資産が弁済のために利用される可能性がありますが、独立したSPCに対する融資とすることで、弁済のために供される可能性がある資産がSPCが保有しているものに限定されるためです。

また、資金を提供する側の立場から見ても、対象事業・資産を独立したSPCが担っていることで、別の事業・資産からの影響を受けないようにすることができます。

プロジェクトファイナンス

プロジェクトファイナンスとは、特定の事業に対して行われる融資です。対象事業から生み出されるキャッシュフローを返済原資とし、担保とする資産も対象事業のものに限られる、という特徴があります。

ストラクチャードファイナンスの一形態で、大規模なインフラ事業や、資源開発事業なで採用される手法です。

PPP/PFI

PFIは「Private Finance Initiative」の頭文字をとったもので、公共サービスの効率化を図るために、民間の資金・経営能力・技術などを活用する手法のことを意味しています。

元々はイギリスで生まれた考え方で、「小さな政府」の実現につなげる取り組みとして誕生しました。
日本でも、内閣府にある民間資金等活用事業推進室(PPP / PFI 推進室)が推進に向けた取り組みをおこなっています。

PPPとは「Public Private Partnership」の頭文字をとったもので、日本語で「公民連携」とも呼ばれます。
公共サービスの提供のために、公民が連携して行う手法のことで、前述のPFIはこのPPPの一種です。
PPPの手法には、PFI以外にも、自治体業務のアウトソーシングなどがあります。

流動化/証券化

流動化/証券化とは、ストラクチャードファイナンスの一種です。

企業が保有している資産をSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)に譲渡し、その資産から発生するキャッシュフローを返済原資として資金調達する手法のことを意味しています。

対象となる資産は、不動産や債権などが一般的です。

おわりに

ファイナンス関連の用語について、簡単な解説を行いました。

筆者の都合で調べたものなので、脈絡のない用語選定になっている部分もありますが、あまり馴染みのない方がイメージを掴むのに活用していただければ幸いです。